なぜ、ポールトゥウィンは“QA(品質保証)”事業を成長エンジンと位置付けるのか? なぜ、ポールトゥウィンは“QA(品質保証)”事業を成長エンジンと位置付けるのか?

※著作・制作 日本経済新聞社 (2025年日経電子版広告特集)。記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます。

DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展や生成AI(人工知能)の急速な普及を背景に、ソフトウエアの開発量がかつてない規模で拡大している。公共・民間を問わず新たなソフトウエアが次々に登場する中、その品質と安全性への関心が高まっている。ソフトウエアの不具合は社会インフラを含む広範な領域に影響を及ぼしかねずQA(品質保証)の重要性はこれまで以上に増している。こうした中、ポールトゥウィンホールディングス(以下「PTW」)はBPO(Business Process Outsourcing)領域におけるQA事業への取り組みを強化している。同社の強みは、豊富な経験に基づくノウハウとグローバル拠点にある。拡大する市場にどう挑むのか。代表取締役社長の橘鉄平氏に聞いた。

世界で拡大するBPO市場

企業の業務プロセスを外部に委託するBPO市場は世界的な拡大を続けている。BPOは、特定の業務を専門性やスケールメリットを持つ外部企業に委ねることで、生産性の向上を実現する手段となる。自社で業務を完結させる内製と比較して、業務の効率性や品質の安定性を確保できる点が利点とされる。

慢性的な人手不足や、ビジネス環境の急激な変化に対応するうえでも、企業にとってBPOの導入は有力な選択肢となっている。

実際、世界のBPO市場は2032年に5447億8000万米ドルに達するとの予測もある。日本国内においても矢野経済研究所の調査では、2028年度に市場規模が5兆7000億円を超えると予測されている。

国内BPO市場規模推移・予測

国内BPO市場規模推移・予測

注1:事業者売上高ベース
注2:IT系BPOとは発注企業からシステム運用管理業務を委託され代行するサービスとし、非IT系BPOとはその他の業務を委託され代行するサービスとする。
注3:2024年度以降は予測値
出所:矢野経済研究所「BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)市場に関する調査(2024年)」(2024年11月19日発表)

そうした中、近年とくに注目を集めているのがQAの分野だ。ソフトウエアのテストや検証を第三者として担い、製品の品質を保証するサービスである。ソフトウエアの安定性や安全性への要求が高まる中、BPO分野におけるQAは今後ますます存在感を強めるとみられる。

ゲームデバッグ業界の雄が
QA事業を本格化

橘 鉄平氏

ポールトゥウィンホールディングス
代表取締役社長

橘 鉄平

QA事業を展開する企業は国内に複数あるが、その中でも異色のバックグラウンドを持つ企業がPTWだ。1994年に同社グループは設立され、ゲーム業界向けのデバッグサービスを出発点に着実な成長を遂げてきた。やがて海外市場を視野に入れたゲームコンテンツのローカライズや、ゲームメーカー向けのコンタクトセンター運営などに進出しサービス領域を拡大。こうした取り組みを通じて蓄積されたノウハウは、ITベンダーや金融機関など他業種からの業務受託にも展開されビジネスの裾野を広げている。

現在は、幅広い業務のアウトソーシングを手がけるBPOの専門企業としての地位を確立。国内外で40社を超えるグループ企業を擁し、それぞれが独自の強みを生かして多様なBPOサービスを提供している。

「クライアントとの信頼関係を築きながら当社が支援できる分野を広げてきました。ゲーム関連だけでも多彩なメニューがあり、グループ全体で幅広いサービスをそろえています」と橘氏は語る。

ソフトウエアの品質を確保するうえで不可欠な工程が、不具合の検知や検証だ。ゲーム業界ではデバッグと呼ばれ、業務アプリケーションやシステム開発の分野ではQAやテストといった言葉が使われる。目的や作業工程に共通点はあるが、技術的なアプローチは異なるためノウハウの単純な転用は難しい。それでも、ゲームデバッグで培われた業務運営の知見はQA事業にも応用の余地がある。多拠点にまたがるBPOの運営や人材マネジメント、工程設計などの面でその経験が大きな強みとなる。

「ゲームデバッグからスタートした企業として、QAサービスへ領域を広げるのは自然な流れです。ただし、ゲームと業務アプリケーションは異なります。ゲームデバッグではユーザー目線の検証が重視されますが、QAでは開発視点の品質管理がより強く求められます。その違いを大きな壁だとは感じていません。むしろ教育やフードサービス関連などのユーザー視点が重視される領域では、当社の知見が強みとして生きるはずです」と橘氏は話す。

業務アプリケーション市場は拡大を続け、機器に組み込まれるソフトウエアも含めて需要は急増している。それに伴いQA分野の成長余地も大きい。

「実は、QAサービスそのものは20年ほど前から手掛けてきました。QA事業を主に担っていたのは、クアーズという子会社です。QA事業の本格的な拡大を見据えて、2021年9月にクアーズと経営を統合しました」と橘氏。QA事業の本格展開に向けた機を逃さぬ意思決定だったといえる。

グローバル拠点とAI活用で
市場の拡大に応える

今後QAのニーズが高まると予測されるのはソフトウエア開発が活発な地域だ。PTWは、国内14都市に加え海外14カ国に20拠点を展開しており、こうしたグローバルネットワークは、同社の大きな強みである。各国でゲームデバッグを中心としたBPOサービスを提供しており、すでに土地勘のある地域に新たなQA拠点を設けることも容易だろう。

グローバル拠点

(2025年5月31日現在 未稼働の国、拠点を除く)

プログラム開発の現場では、AIの活用が急速に進展している。中でも生成AIはプログラミング分野における最注目の技術の一つだ。ソフトウエア開発への需要が増す中でAIがその速度と効率をさらに高めている。こうした開発の進化に対してQA体制の高度化が不可欠だ。

「開発ではAIが本格的に活用される一方で、人手のみに頼ったテストでは対応が難しくなっています。そこで私たちは、QAプロセスにおけるAIや自動化技術の活用に注力しています」と橘氏は話す。その取り組みを先導するのが、2025年2月に新設された先端技術研究室である。同研究室では、機密性の高い環境で活用可能なローカルLLM(大規模言語モデル)やローカルSLM(小規模言語モデル)、生成AIを活用したテストプロセスの高度化、さらにはAI人材の育成にも取り組んでいる。橘氏は、今後こうした取り組みを積極的に発信していきたい考えだ。

PTWは、中期目標として売上高1000億円の達成を掲げている。成長の柱は既存グループ企業の一層の成長と新規事業創出、そしてM&Aも視野に入れた柔軟な経営戦略とその推進だ。

橘氏は「グループ全体として、分野・地域・工程の三軸で事業の成長を目指す」と話す。ゲームや業務アプリケーションといった分野、海外を含む地域、デバッグやQAなどの工程、それぞれの軸で拡大を進める構えだ。

中でもQAはあらゆる産業分野での拡大が期待される重点市場と位置づける。成長フェーズにあるPTWは、拡大するQA市場の需要に応えるべく体制の強化を進めている。その戦略の中核にはAI活用を据え、事業の高度化と競争力の向上を目指す。

DXとAI技術の発展によりソフトウエア開発が急増する中、不具合によるリスク回避の観点からもQA工程の重要性は一段と高まっている。開発量の増大に伴い限られた社内リソースだけでは品質管理が追いつかない企業も多く、専門性と効率性を兼ね備えた外部パートナーによるBPOの活用が加速している。

ソフトウエア品質の重要性が一層高まる現在、PTWはその変化を追い風にさらなる飛躍を目指している。

「QAプロセスへのAI活用に注力しています」(橘氏)
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